NX CADはいかにして中小企業 (SMB) のニーズに対応するのか

コロナの世界的大流行が中小企業に大きな打撃を与えたことは周知の事実です。しかし、その揺り戻しともいうべき状況が中小企業 (SMB) の間で見られていることは朗報といえるでしょう。パンデミックを契機に多くの中小企業が包括的なデジタルツインを導入するようになり、コネクテッド化が進んできました。
次世代設計ポッドキャストの今回のエピソードは、ジェニファー・パイパーがホスト役を務め、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアのNX製品エンジニアリング・ソフトウェア (CAD) のSMB製品マネージャーであるジェフ・シャゲナをゲストに迎えてお送りします。
ジェフとともに、特にコロナ後の中小企業向けCAD市場がどのようになっているのかを見ていきましょう。デジタル・トランスフォーメーションを筆頭に、この市場の変化を牽引しているトレンドについて語ります。また、シーメンスが描くNXの将来像や、NXがSMBのニーズにどう適応していくのか、NXパッケージの認知度向上に向けた取り組み、ディスカバリーセンターなどのツールへの投資、AI/MLなどのイノベーションに対する考え方などにも話を広げていきます。
このエピソードの内容:
- SMB市場の動向とコロナのパンデミックの影響
- シーメンスのNXが中小企業業界のニーズにどのように適合するか
- SMB向けのクラウドベースのソリューション
- NXの習得と活用を容易にする取り組み
- NXのこれから
私たちはNXを使用しているすべての方々に向けて、NXで何を目指しているのか、特に何を重視しているのかを詳しくお伝えしたいと考えています。
ジェフ・シャゲナ シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア
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ポッドキャストのトランスクリプト
ジェフ・シャゲナ: NXは大企業、大手OEMなど、大規模組織だけのものという認識をしている方々もいます。しかし、安心してください。そんなことは決してありません。
ジェニファー・パイパー: 次世代設計ポッドキャストへようこそ。ホストのジェニファー・パイパーです。本日のゲストは、NX Design開発チームのメンバーであるジェフ・シャゲナです。NXでどのようなイノベーションが起こっているのか、中小企業のユーザー体験を向上させるための取り組み、そして顧客からの提案やフィードバックがNX開発にとってどれほど重要であるかをお話しします。 さっそくゲストをご紹介します。ジェフ、自己紹介をお願いします。
ジェフ・シャゲナ: ジェフ・シャゲナです。NX Designチームの製品マネージャーとして、特にコア設計部分を担当しています。特にフォーカスしているのが中小企業です。私はシーメンスに入社して約5年になりますが、その半分の期間でNX DesignのSMB製品マネージャーを務めています。
ジェニファー・パイパー: ジェフ、本日はありがとうございます。お付き合いいただき、大変うれしく思います。まず、中小企業市場で見られるいくつかのトレンドについてお伺いします。
ジェフ・シャゲナ: 重要なことは、一歩下がって、SMB CAD市場の全体像を俯瞰することです。中小企業は特に数年前のパンデミックの打撃が大きく、その多くで利益率が逼迫したと思います。そのような本当に予期せぬことが起こったとき、中小企業は当然のことながら、大きな痛手を被ります。しかし、その揺り戻しともいうべき状況が中小企業 (SMB) の間で見られていることは朗報といえるでしょう。一方、現在、SMBの成長は著しいものがあります。SMBはコロナ前の状況まで戻ったというよりも、さらに成長を加速させています。CADを導入しているSMBの割合は、大規模組織のそれと比べても引けをとりません。ですから、CAD市場の成長全体を見てみると、SMBの占める割合は、大企業セグメントよりも伸びていると言えるでしょう。大変エキサイティングなことだと思います。また、CIMdataなどのアナリストのデータを見ると、今後5年、ほぼすべてのCADの成長が予想されています。主としてSMB向けCADの占める割合が大きいでしょう。ですから、これほど顕著な成長とイノベーションを目の当たりにするのはわくわくするものがあります。パンデミックによる混乱がすべての引き金でした。はじめのうちはなかなか気づきにくいことかもしれませんが、CADの導入はSMBの生産性を次のレベルに引き上げると思います。
ジェニファー・パイパー: 市場の変化の最大要因がコロナ禍であったということですか?
ジェフ・シャゲナ: パンデミックは、デジタル・トランスフォーメーションを本当に加速させました。包括的なデジタルツインのような概念は中小企業の間で徐々に導入が進んでいましたが、パンデミックで一気に普及した気がします。そしてさらにその傾向が進んでいます。デバイスや場所を問わず、柔軟な作業環境が整いつつあります。ここで重要なことは、できる限り、常につながりあっているということです。そして、そのための最良の方法といえば、CADの観点でいうと、包括的なデジタルツインとその利点を最大活用することです。ですから、間違いなく、デジタルツインと包括的なデジタル・トランスフォーメーションはSMBに変化をもたらす大きな推進力です。それに加えて、先ほども述べたように、職場環境の柔軟性も重要です。最近ではリモートワークも増え、コーヒーショップでもいろいろなデバイスを広げて仕事をしている人を多く見かけます。したがって、ユーザーがどこで仕事するのか、何を使用しているかに応じて、ユーザーのニーズを満たさなければなりません。全員が高レベルの機械、高レベルのハードウェアやコンピューターを使用する必要はないのです。今日はこのような多様なITタイプを考慮できなければなりません。
ジェニファー・パイパー: いわゆる大量離職時代についてはどうでしょうか?それはSMBにどのような影響を与えていると思いますか?
ジェフ・シャゲナ: 多くの人が転職していることは確かですが、ただ会社を辞めたからと言って日がな一日家に籠っているわけではないでしょう。別の見方もできると思います。離職者のなかには、例えばパンデミックで在宅勤務を余儀なくされた結果、自分の情熱を追求したい、あるいは起業したい、キャリアアップしたいと考えたケースもあるのではないでしょうか。ここで強調したいのは、例えばスタートアップに転職する、自分で起業するなど、事情や状況はさまざまだということです。スタートアップ企業はいずれも今後5年間のうちに、SMBの成長の大きな原動力になるでしょう。われわれは、思いもかけないようなイノベーションを目の当たりにしており、その多くがCADによって後押しされています。そして、パンデミックと大量離職が起こらなければ、これほどまでにイノベーションが進むこともなかったでしょう。本当に、スタートアップにとっては大きな飛躍のチャンスです。また、クラウドとSaaSも加速度的に普及しつつあり、これはSMBに変化を促す別のトレンドと言えます。
ジェニファー・パイパー: つまり、多くの人が言っているようなネガティブな側面ではなく、良いことであると捉えているということですか?
ジェフ・シャゲナ: 先ほど申し上げたように、今日、人々は働く場所、環境、デバイスを問いません。ですから、どこにいようとも、どのデバイスであろうとも生産的に作業できる必要があります。クラウドであれば、NXを操作するためにグラフィックカードなどの最新かつ最高のハードウェアを必ずしも必要としないため、本当に便利です。 たとえば、モバイルやタブレットでも十分に仕事できます。数年前の私たちがどこで、どのように仕事をしていたのか、と考えると隔世の感がありますね。今、クラウドでできることというのはその頃には想像もできませんでした。そして、SMBにとって重要なもう1つの大きなトレンドは、真のスマート製造がなされているか、モノのインターネットをどのように支えているかだと思います。スマートテレビ、アレクサやSiriなどのアシスタント機能をはじめ、すべてのデバイスがコネクテッド化し、スマート機能を備えるようになってきました。それが本当に意味することは、製品がますます複雑になっているということであり、製品で成功を収めるためには、多機能化しなければならないということです。スマート製造にはCADが必要です。また多岐にわたるプロセスをサポートしなければなりません。すばらしいデバイスを開発しているのがこうした革新的なSMB企業であるという事実はまた、変化のもう1つの原動力だと思います。すばらしい製品開発には、市場で手に入る最高のCADが必要です。
ジェニファー・パイパー: ジェフ、あなたの主戦場は中小企業ですね。シーメンスのNXはSMBのニーズにどのように対応していますか?
ジェフ・シャゲナ: この数年間、私は既存顧客、ユーザー、見込み客など、さまざまな人々と話をしてきました。NXは大企業、大手OEMなど、大規模組織だけのものという認識をしている方々もいます。しかし、そんなことは決してありません。われわれは特にここ数年、SMBの皆様に特に、NXをもっと知ってもらいたいと取り組んできました。NXは常にある一定の知名度がありますが、NXでできること、われわれがどれだけすばらしいツールをお届けしているかをより広く認識してもらいたいと考えます。SMBは事実、われわれの収益の多くの部分を占めており、特に機械、自動車、航空宇宙などの主要業界のSMBの皆様にもっとNXを知っていただきたいと思っています。シーメンスのツールは本当にSMBにぴったりなんです。ここ数年でSMBを支援するという目的を掲げて取り組んできたことを振り返ると、SMBにおけるNXの存在感を高める機運は十分に高まっていると言えます。パッケージソフトは確かに大きな領域であり、皆様はもしかすると、「NXのすべての機能は使わないな。おそらく、我々の手の届く価格帯ではないだろう」と思われるかもしれません。それは杞憂です。そうではありません。SMBこそ、われわれの注力分野であり、SMBやあらゆるサイズの組織にとって使いやすい適正サイズのパッケージを提供することを主眼に置いてきました。1人で自宅で作業されている方であろうと、1000人規模のOEMであろうと同じです。
ジェニファー・パイパー: SMBのニーズを考えたとき、NX以外におすすめのツールはありますか?
ジェフ・シャゲナ: われわれが力を注いできたことの1つが、それは経営陣の大きな後押しも受けていますが、シーメンスの機械設計バンドルパッケージです。これには社内外の多くの注目が集まっています。パッケージの中身を詳しくお話しても退屈なので省きますが、NXのコア設計ツールであるNX Mach 1シートが付属しています。また、Solid Edgeは地域によって異なりますが、2シートまたは3シートです。そして、何よりも強調したいのが価格です。コア設計ツールに含まれている機能から考えて、この価格帯は非常に魅力的なはずです。非常にエキサイティングな取り組みです。本日はNX設計ポッドキャストですが、Solid Edgeについて簡単に触れると、NXとSolid Edgeの相互運用性を確保するため、両チームは連携してきました。NXとSolid Edgeの双方の習熟度を早めるため、NXは全体的にSolid Edgeと非常によく似た外観と使い勝手になっています。ですから、お客様がツールを使えば使うほど、なるほど、と思っていただけるはずです。
ジェニファー・パイパー: NXとの新しいスタートアップ・プログラムを立ち上げたばかりだと伺いましたが、それについてもう少し詳しく教えてもらえますか?
ジェフ・シャゲナ: Siemens Xceleratorの全ポートフォリオを、スタートアップ企業にとって非常に理にかなった価格帯でお届けしています。スタートアップ企業の皆様が成長し、成功するのを支援したいのです。スタートアップ・プログラムは昨年末に開始したばかりなので、NXとしてはまだ比較的新しいものですが、わくわくする取り組みです。このプログラムがすでに多くの素晴らしい分野で採用されており、いずれ、そこから成功事例が出てくることは間違いないと思います。そして、私が考えていたもう1つのパッケージングは、実は価値ベースのライセンスでもあり、これは比較的新しいものです。業界全体を見ても一般的になりつつありますが、バリューベースのライセンスです。基本的に複数のNXアドオン製品をすべてこのプールにまとめているため、すべてのライセンスを個別に購入したり、購入する価値があるかどうかを判断するために1つ1つ試したりする必要はありません。この点は特筆すべきことだと思います。このトークンのプールを購入するだけで、基本的にNXアドオン・ポートフォリオ全体にアクセスできます。すべてのアドオンを個別に購入するよりもはるかにお得な価格で、すべてのNXポートフォリオを最大限に活用できる非常に優れた方法です。そして、企業の規模が長期的に拡張し、より多くのNXアドオンや機能が必要になったとき、トークンは間違いなく最適な方法です。
ジェニファー・パイパー: それはどちらかというと図書館型のシステムですよね?つまり、ユーザーがアドオン機能の1つを使用し終わったら、それをトークンプールに戻すと、社内のほかのユーザーがそのトークンで同じ機能を使用できます。
ジェフ・シャゲナ: そのとおりです。トークンは再利用可能で、1回限りのトークンとは異なります。
ジェニファー・パイパー: では、クラウドはどうでしょうか。クラウドの選択肢を希望されているお客様にはどのような提案をしていますか?
ジェフ・シャゲナ: クラウドは、最近の中小企業にとって、そして率直に言って、すべての方々にとって大きな存在です。NXはクラウドでも展開しており、クラウドの選択肢をご希望のお客様にシーメンスとして新しい選択肢を提供する役割を果たしていることは確かです。クラウドについて語るとき、最もエキサイティングなニュースといえば、おそらくNX X製品のリリースでしょう。これは、パッケージ化されたクラウドベースのソリューションであり、NXストリーム全体をインフラストラクチャとして使用できます。つまり、バックエンドの機能、すべてのサービス管理、すべての機能がパッケージ化されており、グローバルに利用できます。ですから、クラウドネイティブなソリューションを求めながらも、例えばデスクトップで従来から享受していたNXのすべての利点にもアクセスしたいとお考えの方々にとって、これは非常に魅力的な選択肢といえるのはないでしょうか。また、NXはクラウドネイティブの展開も進めています。Mold Connectを1つリリースしたばかりですが、実際これはSMBを対象としたものです。これは、サプライヤーと何度もコミュニケーションを取り、金型、工具、ダイの設計などについて価格を評価する 方法です。このように、複数のSMB製品の提供がすでに開始されていることにわくわくしています。構想中のものはまだお見せできませんが、遅かれ早かれ公開されるでしょう。
ジェニファー・パイパー: とてもエキサイティングですね。次に、学生向けにどのようなプログラムを実施しているのか教えてください。
ジェフ・シャゲナ: 最近、NX Student Editionもリリースしましたが、これは、学術部門や教育の分野での存在感を高めるための非常にエキサイティングな方法だと思います。完全無料です。これは、見逃せない大きなポイントです。だから、試してみない理由はありません。サインアップしてダウンロードするだけです。NXのツールスイートの全機能を提供しています。今後はシミュレーションなど、さらに多くの新たな機能が登場する予定です。学生の皆様にとって素晴らしいサービスだと思います。CADが趣味という方や学生の方であれば、空き時間に自由にCADを使いたいと思われるでしょう。3Dプリンティングやアディティブ・マニュファクチャリングは、常に非常にエキサイティングな技術ですね。私自身も学生時代は、これらを使ってみたいといつも思っていました。NXはNX Student Editionでそれができるのですからすばらしいことです。実際の仕事であっても学生であっても、同じように作業できます。上級設計プロジェクトなどのコンテストに応募する予定の学生の皆様、ぜひNX Student Editionをご活用ください。われわれもいくつかのイベントを主催しています。年に1回のNXスチューデントデーも今年、2回目を開催したところです。スチューデントデーにはRed Bull Racingチームなどの業界関係者を招いています。F1好きにはたまらないでしょう。実際の業界のプロたちがNXをどのように使っているのか、学生の皆様にNXやシーメンスは何ができるかを紹介する良い機会です。この機会にわれわれも、教育機関や学術機関とのつながりを深めたいと願っています。
ジェニファー・パイパー: 学生にとって、NXの世界を知る絶好の機会ですね。ジェフ、先ほど、ユーザーに今まで以上に大きな価値を提供するという話をしていましたね。それを実現するために、製品面でどのようなことを行っているのか、教えてもらえますか?
ジェフ・シャゲナ: 中小企業にとって重要なことの1つに「効率性」、つまり少ない時間でより多くのことをすることが挙げられます。われわれはこの点を支援したいと思っています。効率化は明らかに誰にとってもメリットがあることは事実ですし、この部分は当社の強みでもあります。シーメンスは継続リリースを続け、常に新しいアップデートを提供しています。NXのメジャーリリースは半年おきのはずです。製品面でも多くのことを行っています。NXの全ユーザーに対し、当社が何をしているのかを効果的にお伝えしたいですし、皆様の関心事については特に、シーメンスがどう取り組んでいるかをお知らせしたいと考えています。MBDやPMIしか扱っていないと、われわれがスケッチ機能などをどう考えているのか、気に留めないかもしれません。しかし、私たちは、皆さんに関係のある事柄については正しく情報を共有したいと考えています。そこで、NXで表示されるスタートアップ・ページを全面的に見直しました。以前はウェルカムページでしたが、現在はNXディスカバリーセンターと呼んでいます。NXを初めてお使いの方にとってNX習得に役立つページであるのは間違いありません。同時に、このディスカバリーセンターのページは、新規ユーザーであろうと25年間来のNXユーザーであろうと、NXの付加価値を高める効果があると気付きました。ですから、そのスペースを使って、私たちが具体的に何をしているのかを本当に伝えたいと考えています。例えばこのユーザーはどのアプリケーションを使用しているのか、という大まかな視点から見てみましょう。このユーザーはどの機能を使っているのでしょうか。それを踏まえて、特定の領域に特化したヒントやコツ、強化機能を的確に紹介します。ですから、MBDを頻繁に使う方にはこうメッセージが出ます。「昨年行ったMBDの機能強化をいくつか紹介します。この機能のことをお気づきでしたか?興味ある情報が含まれているかもしれません」NXから最大限の価値を引き出す方法やNXで強化している機能など、新しい機能のすべてを案内しています。チーム全体のことをすべて把握するのは難しいです。個人ユーザーであれ、企業ユーザーであれ、お客様にとっても、自分にとって重要なことやワークフローの最新情報を常に把握しておくことは簡単ではないでしょう。そこで効果を発揮するのがディスカバリーセンターです。
ジェニファー・パイパー: NXのリリースサイクルが6か月ごとであるという点が大きいですね。NXの使いこなすため、ユーザー体験を向上させるために、具体的にどのようなことをしていますか?
ジェフ・シャゲナ: 私たちは、実際の操作や手順をユーザーが理解しやすいようにするとともに、当社の取り組みがユーザーにとって直接的なメリットをもたらすことを目指しています。また、私自身、目で見て覚えるタイプなんですが、そのような方のために素晴らしいテキストも用意しています。目で見て覚えるタイプの方には、NXに200以上の新しいヘルプビデオが付属していることをご紹介しましょう。主な設計タイプを網羅したコマンドについてビデオで説明しています。どのようなワークフローやユースケースでどのコマンドを使うのかを、実際に見て学ぶことができます。私自身も、いくつかを実際に見てみました。そして、多くのユーザー、つまり新しいユーザーだけでなく、新しいワークフローに移行するユーザーも、これらすべてのコア設計に関わるコマンドのさまざまな設定やオプションについて、多くを知ることができると思います。そしてもう1つ、声を大にして申し上げたいのが高効率の検索機能です。NXには多くのコマンドがあります。私自身、大体はどのコマンドがどこにあるのかを知っていますが、探しているコマンドがどこにあるのか見つけられないこともあります。そのようなときはいつもコマンドファインダーのお世話になっています。コマンドファインダーがなければ、必ずしもコマンドのすべてを使いこなせていないということに気づいたのです。
ジェニファー・パイパー: また、イノベーションの面ではどうでしょうか?
ジェフ・シャゲナ: 機能的な側面にとどまらず、イノベーションは一般的に、特に中小企業にとって魅力的だろうと思います。この数字を聞いて驚かないでくださいね。実は、この2年間でNX開発チームは100件以上の特許を取得し、ほかでは考えられない高い機能性を実現しました。シーメンスの取り組みは、特にAIと機械学習の分野では、目を見張るものがあります。当社は数年前にコマンド予測機能をリリースしましたが、これは非常に成功しました。あちこちで絶賛の嵐でした。ワークフローに沿って、いつもの操作手順に基づいて、次に使うだろうコマンドを正確に示してくれます。実際のユーザーの操作からわれわれが学び、その手順をワークフローに適応させます。 これは本当に素晴らしいことです。また、NXには音声コマンド・アシスタントも搭載されました。まるで自分だけのNXアシスタントのようです。アレクサやSiriに話すように、NXに「CADを起動して」と話しかけてください。
ジェニファー・パイパー: うわー、それはとてもすごいですね。その機能の精度はどうですか?
ジェフ・シャゲナ: 最初は少し懐疑的でした、パーソナル・アシスタントが私の代わりにCADを操作できるのか、と。アレクサがインターネットで何かを検索するのと、NXがCADを操作するのは別次元の話です。しかし、うまく機能していることに驚きました。また、これまでの取り組みが功を奏していること、今後、どのような展開ができるのか、非常にわくわくしています。ですから、AIの機能強化はどれも本当に素晴らしいと思います。
ジェニファー・パイパー: ほかに特に期待している展開はありますか?
ジェフ・シャゲナ: NX Designの大きな強みの1つがNXシンクロナス・モデリングです。シンクロナス・テクノロジーはシーメンスが発明しました。われわれはその分野のイノベーターであり、リーダーです。多くの特許を取得しています。毎回のリリースで、シンクロナス・テクノロジーに何らかの新コマンド、あるいは新機能を追加したいと考えています。いうなれば、シンクロナス・テクノロジーはわが子のようなものであり、われわれが目指す方向性というものを真に表現してくれるものだからです。今回新たに追加したのは、面と穴のクローンを見つける機能です。モデルを指定して、シンクロナス・コマンドを起動すると、いくつかのダムジオメトリが表示されるでしょう。ダムボディの一部のパラメーターは不明です。NXにとっては、そのジオメトリの作成方法は分からず、単なるダムボディです。そこで、シンクロナス・テクノロジーで面と穴のクローンを探しましょう。穴が1つ見つかりました。これは 座ぐり穴かもしれません。単なるシンプルな押し出しではなく、例えば座ぐり穴や皿座ぐり穴の可能性もあります。NXはそれを認識して、その特定の穴をユーザーが編集できるようにしたり、パーツ内のその穴のすべてのクローンを見つけて、それらすべてを選択できるようにします。つまり、背景なしのボディやパーツ履歴なしのボディに対して、これらの一括編集を行うことができます。このように、シンクロナス・テクノロジーの機能にはいつも圧倒されます。どうやっているんだ?全然わかりません。これは本当に素晴らしい技術です。穴径を変更する新しいコマンドが多く追加されており、パターンサイズも変更できます。人間がそれを見れば「ああ、そうだ、これは円形のパターンだ」と分かります。しかし、それが何らかのパターンであることをNXに伝えるためのパーツ履歴がありません。シンクロナス・テクノロジーであれば、この「パターンサイズ変更」コマンドを使用すればよいのです。パターンの穴の1つを選ぶと、「これは円形のパターンだ」と表示され、間隔、ピッチ、カウントを操作するのと同じようにパターンを編集できます。シンクロナス・モデリングの素早い変更機能は驚異的です。
ジェニファー・パイパー: もちろん、ソフトウェアを継続的にリリースしていると、バージョン間で大幅な変更が加えられます。ソフトウェアのアップデートに際し、お客様の反応はどうですか?
ジェフ・シャゲナ: 難しい問題です。というのも、NXには非常に多くの情熱的なユーザーがいらして、実際には毎年何千もの機能強化リクエストが寄せられています。これまでにも何人かとお話ししましたが、お客様のなかには、「自分のリクエストが届いていないのではないか」、「自分のリクエストは採用されないだろう」、「こちらが何を言おうとシーメンスは耳を貸さないのではないか」と考えていらっしゃる方もいます。そんなことはありません。絶対にそうではなりませんからご安心ください。機能強化リクエストは、ユーザーからの日常的にフィードバックをいただく貴重な機会であり、特に中小企業のユーザーの方の意見は本当に貴重です。われわれは、あらゆる良いアイデアに耳を傾けています。シーメンスには情熱的なユーザーの皆様に恵まれており、ぜひそうした方の声をお聞かせください。蔑ろにされているなどと思わないでください。われわれは、チームとして、機能強化リクエストにできる限り早く対応すべく、全力で取り組んでいます。先ほど申し上げたように、毎年何千人ものユーザーからリクエストが寄せられているので、その点、ご理解ください。必ずしもタイムリーではないかもしれませんが、皆様が機能強化リクエストを上げてくださるその労力は大きいことを認識しています。私が拝見したところ、機能強化リクエストを動画、PowerPoint、PDF、パーツファイルなどを駆使して作成してくださっているものがあり、基本要件をまとめた提案書に仕上げるためには、どれほどの時間と工数がかかっているのだろうと頭が下がる思いです。本当にすごいことだと思います。非常に多くの時間と労力を費やして強化リクエストを上げてくださっていることは感動的です。
ジェニファー・パイパー: もし、機能強化リクエストのアイデアがお手元にあれば、お送りいただきたいですか?
ジェフ・シャゲナ: ぜひとも、どなたでも、お願いします。良いアイデアがあれば、ぜひお送りください。良いアイデアというのは、どなたから提出されたかなど関係なく、良いアイデアです。素晴らしいアイデアをお寄せいただければ、実現に向けて取り組みます。ですから、ユーザーの皆様、ぜひ、機能強化リクエストのプロセスに参加することをご検討ください。
ジェニファー・パイパー: ジェフ、最後にNXとSMB市場の今後についてお伺いします。どのような展望をお持ちですか?
ジェフ・シャゲナ: 先ほど述べたように、われわれは、ディスカバリーセンターのような新しい試みに継続的に投資していきます。新規ユーザーであろうと、25年間NXを使用しているユーザーであろうと、誰もがNXから得られる価値を最大化できるようにするため、ディスカバリーセンターはNXの潜在価値を押し広げる役割を果たします。そして、さらなるイノベーションにも全力を傾けていきます。ここ数年で100件を超える特許を取得したことに触れましたが、特にAIとMLの分野では、さらに多くの特許取得に向け、動いています。もう1つ、シーメンスはこのたび、AIの最高峰に贈られるアイコニックス賞のファイナリストに選ばれました。これは、シーメンスが社内で進めてきた取り組みが認められた証であり、われわれはこの分野の業界リーダーであると自負しています。
ジェニファー・パイパー: 最後に付け加えることはありますか?
ジェフ・シャゲナ: 私どもは、クラウドの利点、柔軟な作業環境、あらゆるデバイスで作業可能なことをすべてのユーザーにお届けしたい、その部分で最大限のサポートをしたいと考えています。最近、社内外で話題になっていると思いますが、NXは2022年のInternational SaaS Awards Programで、エンジニアリング管理、PLM、CAD向けの最優秀SaaS製品賞を受賞したばかりです。大変に光栄なことです。NXはデスクトップとクラウドネイティブソフトウェアの間の相互運用性が秀逸であると評価を受けました。この評価は大きな意味を持つものです。クラウド技術についてはまだ初期段階にあると感じていますが、それでもすでにクラス最高であるという賞をもらっています。このことは、シーメンスの将来がどれほど明るいものかを物語っていると思います。後は、ただひたすらお客様の声に耳を傾けます。お客様あってのわれわれであり、お客様なしにシーメンスの成功はありません。お客様のことを忘れたことはありませんし、シーメンスはお客様第一ではないと、皆様に思われることは全く本意ではありません。そんなことは全く当てはまりません。皆様から寄せられた機能強化リクエストにしっかりと取り組んでいることをお伝えできて良かったです。
ジェニファー・パイパー: 今日の話のなかで、視聴者の皆様に特に伝えたい3つのポイントは何ですか?
ジェフ・シャゲナ: もしかしたら、繰り返しのように聞こえるかもしれません。皆様にとって選択肢は多くあると思います。しかし、重要なことは、シーメンスのソリューションはSMBにぴったりだということです。SMB向けソリューションでシーメンスの存在感は増しています。私たちは、中小企業のお客様や見込み客の皆様のため、できる限りのサポートをしてきました。それが大きかったと思います。繰り返しになりますが、ソフトウェア・パッケージング、新技術、お客様の声に耳を傾ける姿勢という、この3つが大きなポイントであり、誰も置いてきぼりにはしません。私たちは未来に向かって進んでおり、SMBの皆様とともに歩んでいきたいと願っています。
ジェニファー・パイパー: 今日はありがとうございました。また近いうちに、次回のエピソードでお話しできることを楽しみにしています。
ジェフ・シャゲナ: 全くその通りです。SMBについてはまだまだ話し足りません。またいつでも呼んでください。
ジェニファー・パイパー: 皆様、本日のエピソードをご覧いただき、ありがとうございました。次世代設計ポッドキャストのジェフとの2回目のセッションもどうぞご期待ください。次回は、最新の設計イノベーションとソフトウェア・アプリケーションについて話します。 次世代設計ポッドキャストをお届けしました。ホストはジェニファー・パイパーでした。