ポッドキャスト

デジタライゼーションと車両性能エンジニアリングの未来 (エピソード7)

執筆者 Els Verlinden


自動車業界におけるデジタルツインの未来は?

どうすれば製品設計を加速しつつ、初回から正しく設計できるでしょうか?

それは物理試験に完全に取って代わるものでしょうか?

間違いなく、一部の製造企業は、開発プロセスを加速し、コストを削減するために、試験をシミュレーションに完全に置き換えることに注目しています。しかし、それは十分な結果を生み出すでしょうか?

ご想像のとおり、これらの質問に対する簡単な答えはありません。自動車業界におけるデジタライゼーションとシミュレーションの現状と将来について理解を深めるために、ATZ Internationalの編集長Alexander Heintzel氏が、2人の専門家から意見を収集しています。

Steven Dom氏はSimcenterの自動車業界ソリューション担当ディレクター、Tom Van Houcke氏はSimcenterのエンジニアリング・コンサルティング・サービス担当ディレクターです。

彼らは、デジタライゼーションと車両性能エンジニアリングに携わる人に不可欠なポッドキャストを録音しました。

Steven氏とTom氏
Steven Dom氏 (左) とTom Van Houcke氏 (右)

デジタルツインとは何か?

デジタルツインとは何か?」については、さまざまな見解があります。そこで、Steven氏はポッドキャストでSimcenterと自動車の観点からその定義について説明しています。

彼はデジタルツインを「開発のどの段階でも、作成している車両を最適に表現できるコンピューター・モデル」と説明しています。これは、初期のシステム・シミュレーションの概念モデル、詳細なCFDモデル、または試験データから構築されたモデルです。

Steven氏は、「テクノロジーの進化により、エンジニアは開発プロセスの初期段階でシミュレーションを行うことができますが、試験は現在も重要な役割を果たしています」と説明しています。そして、彼はそれがすぐに変わるとは考えていません。

「特に、車両開発では新しい技術やコンセプトが出現するため、常にすべてをシミュレーションできるわけではありません」

機械学習とAI (人工知能)

Tom氏は、シミュレーションの未来における機械学習とAIの重要性を強調しています。「OEMは、機械学習技術を使用することで、試験や現場で得られた多くの履歴データを改良、活用してモデルを作成できると認識しています」「データの収集と保存の能力、計算能力が向上するにつれて、試験と組み合わせて、さらにより包括的なデジタルツインをリアルタイムで使用できるようになります」と彼は説明しています。

AIはこのプロセスを支援しますが、まだ人間の指示が必要であると彼は警告しています。「ガベージイン・ガベージアウト (無意味なデータを入力すると無意味な結果が返される) です」と述べています。「アプリケーションの専門知識だけでなく、エンジニアはデータを適切に使用し、最大限活用するために、機械学習技術を完全に理解する必要があります」

また、この技術をどのように活用するかが、自動運転車の広範な採用の鍵となる可能性があると指摘しています。「AIを使用してドライバーの行動を定義することができます。これは自動運転車の開発に役立ち、一般の人により受け入れられる可能性があります」

自動車エンジニアリングにおけるAIの詳細については、Joelle Beuzit氏のブログをご覧ください。

システムとプロセスの統合

Steven氏は、「前世紀の自動車のシステムは、互いに大きく切り離されていましたが、特に電気自動車の出現により、現在は変化しました」と指摘しています。「今では電気モーター、ギア、パワーエレクトロニクスは、別々ではなく1つのボックスに組み込まれています」と述べています。

干渉を回避し、効率を最大化するには、これらすべてのコンポーネントをより協調的な方法で構築する必要があると説明しています。「そうしなければ、1つに統合できた冷却システムが3つに分かれることになります」

シミュレーションは、モデルベース・システム・エンジニアリング (MBSE) と呼ばれる方法で、これらの異なる領域の開発をまとめる鍵となります。両氏は、この複雑さと、企業が実現するためにどのように組織化できるかについて意見を交わしています。

BMWであり続けるか?

Alexander氏は、新しい開発プロセス、電力、自動運転が最終製品にどのような影響を与えるか、また、車両が他の車両と差別化する独自の機能を維持するのかという問題を提起しています。

興味深いのは、多くの顧客はブランドに忠誠心があり、最新型の車両にも従来のイメージを求めていることです。両氏は、自動車エンジニアリングの変化の影響と、メーカーが製品のアイデンティティを維持する方法について意見を交わしています。

全文を読む

これらすべての質問などを網羅する魅力的な対話を、ポッドキャストでお聴きください。

  • 車両開発におけるデジタルツインの可能性とその限界
  • AIと機械学習を効率的に使用するための役割と要件
  • システム統合を管理し、より高いレベルの効率を実現する方法
  • コラボレーションとプロセス統合が、全体的な複雑さへの対処にどのように役立つか
  • モデルベース・システムズ・エンジニアリング (MBSE) が、開発の効率化にどのように役立つか
  • バックボーンとしてのプロセス管理システムの利点
  • ブランド差別化の未来
  • 自動運転車におけるヒューマン・マシン・インターフェースの重要性
  • 自律性のレベルをスキップすることは賢明か?自動運転車は進化か、それとも革命か?

Alexander Heintzel氏:

皆さま、こんにちは。本日のポッドキャストにようこそ。今回は、シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアの2人の専門家、Simcenterの自動車業界ソリューション担当ディレクターSteven Dom氏と、Simcenterのエンジニアリング・コンサルティング・サービス担当ディレクターTom Van Houcke氏をお迎えしています。ようこそ。

Steven Dom氏とTom Van Houck氏:

こんにちは。

Alexander Heintzel氏:

本日はデジタライゼーションと車両性能エンジニアリングについて深く掘り下げますので、よろしくお願いいたします。では、最初のトピックに移ります。誰もが知っているように、デジタライゼーションと仮想シミュレーションはホットなトピックです。それでは、機会と限界、夢、現状について少しお話しを伺います。Stevenさん、シミュレーションやデジタルツインは、機能的安全性の開発、試験、検証において何を達成できるでしょうか?

Steven Dom氏:

まず、デジタルツインとは何かについて考える、または定義する必要があります。なぜなら多くの見解があるからです。私は常にその状況を説明し、必要に応じて、自分たちの視点からデジタルツインとは何かについて少し見解を述べたいと考えています。

Steven Dom氏:

車両開発に携わる私たちにとって、デジタルツインは開発のどの段階でも、作成している現実や車両を最適に表現できるコンピューター・モデルです。このコンピューター・モデルには、さまざまな形式があります。最初は単にシステム・シミュレーションや、1Dシミュレーションとも呼ばれる概念モデルの可能性があります。その後、非常に詳細なCFD計算やCFDモデルの形式になる可能性があります。また、ある時点では、試験ベースのモデル、つまり試験データから得られる表現にすぎないモデルになる可能性もあります。

Steven Dom氏:

これらすべてがデジタルツインです。単一のデジタルツインがあるということですか?はい、モデルやモデルとしての現実を最適に表現している単一のデジタルツインがあるかもしれません。

Alexander Heintzel氏:

つまり、シミュレーションやデジタルツインは試験に代わるものではなく、将来的には、デジタルツインと実際の試験との相互作用も、開発プロセスのある時点での単なる現実になるということですね。

Steven Dom氏:

その通りです。それは、私たちが知っている現実、あるいは開発のその段階で見ている現実を最適に表現していると言えます。開発の初期段階で、より多くのことを達成する推進力があることは明らかです。シミュレーションが重要な役割を果たす場合、車両開発のできる限り早い段階で、コンピューター・モデルを使用して現実を最大限シミュレーションしたいと考えます。それはなぜですか?その理由は非常に単純です。後半でのトラブルシューティングを避けたいからです。

Steven Dom氏:

私がエンジニアリングに携わっているときに、よく耳にし、実際に話し合ってきたことがあります。25年前、すでに私たちは「より早い段階で行う必要がある」と話していました。技術の進化に伴い、現在は、開発のより早い段階でシミュレーションすることができます。これは今後も継続するでしょう。望めば、その夢に限界はありません。

Steven Dom氏:

一部の企業の最終的な目標は、基本的にすべてをシミュレーションすること、試験を行わないことです。そうは言っても、見解が異なるかもしれません。長年の経験がありますから。Tomさんはどう思いますか?

Tom Van Houcke氏:

そうですね (肯定的)。

Steven Dom氏:

その意味では、特に、車両開発での新しい技術やコンセプトの出現により、すべてを常にシミュレーションできるわけではありません。

Alexander Heintzel氏:

Tomさん、あなたは同意しますか?それともこのトピックに関して将来別の可能性があると思いますか?限界はどこにありますか?

Tom Van Houcke氏:

確かに、より多くの機会があり、実際には2つの進化によって強化されていると言えます。まず、データの収集と保存に制限はありません。OEMは、機械学習技術を適用することで、多くの履歴データ、試験データ、使用されている車両のデータを改良、活用して、実際にモデル、つまり車両の特性と性能の関係を定義する試験ベースのモデルを作成できると認識しています。これは、進化と言えます。一方、計算能力が向上すれば、より包括的なデジタルツインをリアルタイムで実行し、試験と組み合わせて使用できます。また、開発段階だけでなく、車両がすでに市場で使用されている場合でも、コントローラーとパフォーマーを最適化したり、最新データのモデルを使用して改善することができます。

Steven Dom氏:

これはインフィニティ・ループのコンセプトに少し関係し、Vサイクルはサイクルの最後に完了するのではなく、実際に継続し、車両にモデルを使用し、実際にそのモデルを使用するという考えを推し進めるものです。これらのモデルが使用された車両をドライバーが利用すれば、実際に車両で改善することもできます。例えば、そのモデルを使用しているときに、車両の制御ソフトウェアを変更したり、更新することができます。

Alexander Heintzel氏:

先ほど、ドライバーの運転プロセスにおける継続的な車両の学習についても述べていましたが、これを提供するには、AIが必要です。最近では、AIに関する誇大広告があります。このような誇大広告に同意する、または「AIは他の多くと同じようにツールに過ぎず、利点もあるが、常に開発者と同じレベルである」と思いますか?また、どのように確認しますか?

Tom Van Houcke氏:

ええ、基本的にそれは事実だと思います。確かに、AIはツールですが、自分が何をしているのかを十分把握する必要があります。正しい出力を得るためには、何を入力しているかを理解する必要があります。

Tom Van Houcke氏:

一例を挙げると、先ほど述べたように、OEMや企業は、多くの過去のデータ (履歴データ) があることを認識しています。ベンチマークから得られる大量のデータですが、正しい方法でどのように使用すればよいでしょうか?それには3つの要件があります。まず、再利用できるようにデータを保存し、比較できるように正確にラベル付けする必要があります。次に、もちろん、適切な方法でデータを最大限活用するには、機械学習技術に関するノウハウが必要です。3つ目として、最も重要なことは、アプリケーションのノウハウが必要です。設計案を特性評価するにあたり、開発やデータベースのどの特性が入力ベースであるかを把握することが重要です。

Tom Van Houcke氏:

ガベージイン・ガベージアウトです。自分の車両を特性を評価するとします。この車両のNVH性能はどうか、また車の色をどうするか、検討すると仮定します。赤い車は常にノイズが少ないという出力が得られるかもしれません。これは意味を成しません。一方、ホイールベースやタイヤの特性などを考慮することが重要です。

Tom Van Houcke氏:

それだけではありません。機械学習ができることは、履歴データの解析だけではありません。また、この包括的なデジタルツインについて考えることもできます。操作中にこれをどのように使用しますか?コントローラーを最適化するためにどのように使用しますか?今日では、完全なデジタルツインを使用してもこれは不可能ですが、機械学習技術を使用してモデルを減らし、ニューラルネットワークに置き換えることができます。ニューラルネットワークは基本的に入力と出力の関係を提供し、操作中の使用や制御の最適化には十分かもしれません。

Steven Dom氏:

つまり、車両の中に車両のモデルを入れているということですか?

Tom Van Houcke氏:

はい。確かに、その通りです。

Steven Dom氏:

それは素晴らしいですね。

Tom Van Houcke氏:

さらに、機械学習は、例えばソフトウェアの開発中に専門家なら何をするか、開発の次のステップとして専門家ならどの解析をするか、設計が目標を達成していない場合、設計を改善するために何をすべきか、どの点を検討すべきかなどアドバイスを提供します。また、AIを使用して人間のドライバーのような行動を定義できるという素晴らしい具体例もあります。これは自動運転車の開発に役立ち、一般の人により受け入れられる可能性があります。

 

Alexander Heintzel氏:

おっしゃる通りだと思います。現在、ほとんどの人は車の自動機能を体験していませんが、これについては後で少し話しましょう。では、システム統合とプロセス統合についてお聞きします。これは先ほどの内容と直接関連しています。車両システムは、私たち3人が知っているように、これまで以上に相互に関連しています。これらは統合されています。どのように管理すべきか、またどのような課題が生じますか?簡単なことではありませんよね。Stevenさん、お願いします。

Steven Dom氏:

実に重要な点を指摘していますね。車両が複雑化するにつれて、私は常に20年前、30年前の昔の車について振り返ります。当時のシステムは互いに完全に切り離されていました。内燃機関があり、それを制御する何らかの装置があったかもしれませんが、少し遡ってみても、制御装置はありませんでした。計算機があっただけです。アクセルペダルはありますね、Tom?シフトレバーとクラッチ付きのトランスミッションがあります。これらのシステムはすべて、完全に切り離されていました。もちろん、これらは車を走行させるために接続されていましたが、相互依存性はほぼありませんでした。私は、そこにある2つの側面や進化を示すために、現在では非常に一般的なものやそうなりつつあるものとこれらを比較します。

Steven Dom氏:

それが示すものはeドライブ・システムです。このシステムでは、基本的に電気モーター、ギアボックス、パワー・エレクトロニクスのすべてが1つのボックスに組み込まれています。そのため、電気モーターの電磁気の担当者、ギアボックスのギアの担当者がいるわけではありません。ギア比を計算するだけの非常に単純なギアボックスかもしれませんが、それでもギアボックスです。電気モーターに関連するパワー・エレクトロニクスを、互いに完全に独立して動作させることができます。つまり、さまざまなシステムがありますが、単独で、または統合されたコンポーネントとして効率的なユニットを実現するには、さまざまな分野の専門家が協力する必要があることは明らかです。

Steven Dom氏:

名前を挙げるつもりはありませんが、市場にはコラボレーションが効果的に行われていない数多くの例があります。これらは、ただ冷却システムだけを検討しています。例えば、電気モーターには冷却が必要です。ギアボックスやパワー・エレクトロニクスにも冷却は必要です。その冷却システムが全体で1つの冷却システムとして構築または設計され、あらゆる側面が同時に考慮されている場合、熱エンジニアは、電子、ギアボックス、電磁気の3つの異なる主要コンポーネントの担当者の2人、または3人全員とコラボレーションする必要があります。共同で行い、適切にコラボレーションすれば、優れた統合冷却システムを設計できます。しかし、市場の一部の車両では、これらの冷却システムが未だに分離されています。

Steven Dom氏:

電子、ギアボックス、電気モーターの各担当者がそれぞれ冷却システムを設計した場合、熱部門の担当者は、これらすべてが適切な方法で冷却されていることを確認する必要があります。その場合、冷却システムは3つになります。一方で冷却システムが1つのほうが良いはずです。確認作業は一度で済み、より効率的です。これらのシステムが統合された車両が市場にあります。

Steven Dom氏:

実際には、さらに一歩進んで、HVACシステムを搭載した車両になります。その車に搭載されている空調には、冷却ループまたは加熱/冷却ループも必要です。しかし、それらをつなぎ合わせ、実際に全体として、統合システムとして最適化することで、はるかに高いレベルの効率を実現できます。そのため、複雑さにより、より深いコラボレーション、つまりより優れた共同作業の方法が必要になります。

Alexander Heintzel氏:

それは重要な点ですね。技術的により効率的にする必要があることは明らかです。最適化し、お客様が求める適正価格で製品を市場に投入する必要があります。これはプロセス的には何を意味し、開発部門にとって何を意味するでしょうか?伝統的に自動車メーカーは縦割り組織です。

Steven Dom氏:

サイロ化ですね。

Alexander Heintzel氏:

エンジン部門、内装部門、電子機器部門があり、すべてを連携する人が必要になります。これは将来的には当てはまらないかもしれません。では、あなたの視点から見ると、将来必要な「プロセスに関連する」組織的な変化とは何でしょうか?

Steven Dom氏:

付け加えるとすれば、顧客ベースで最近よく見かけることの1つは、システム・エンジニアリングのようなアイデアです。これは、基本的に、要件と要件に関する詳しい説明をグローバル・レベルで実装する必要がある機能に結び付けて、それをさまざまなサブシステムにつなぐ方法論です。検証管理、検証作業を各機能に結び付けるプロセスを作成し、さまざまな要件のすべてを非常に詳細なプロセスで検証します。これは基本的に航空宇宙業界で確立されており、すでに非常に長い間行われています。宇宙プログラムでは基本的に紙ベースです。自動車にも採用されていますが、実際には、その環境や世界では、システムの相互接続は自動車よりもはるかに明白であり、早い段階から問題にもなっています。

Steven Dom氏:

そして今、自動車の世界では、「モデルベース・システム・エンジニアリング」や「モデルベース開発」などの業界用語が話題となっています。これは、相互接続を実際にサポートするために、お客様が同様のアイデアやコンセプトを開発に実装しようとするものです。しかし、簡単なことではありません。

Tom Van Houcke氏:

はい、簡単ではありません。誰もがその方向に進まなければならないことを認識していますが、必要な情報をどのように交換するか、また最終的にモデルをどのように交換するべきでしょうか?すべての部門、車両の一部を担当するすべての人が、あらゆる情報を正しい方法で得る必要があります。自分がギアのリスク担当者の場合、ギアに関するすべての詳細が必要ですが、接続されている他のコンポーネントがギアトレインに与える影響を知る必要もあります。

Tom Van Houcke氏:

これを実現するには、モデルの交換、情報の交換など、適切なプロセスが必要であり、バックボーンで優れたシステム、これを強化できる優れたツールが必要です。

Alexander Heintzel氏:

おっしゃる通りだと思います。お話を続けてください

Steven Dom氏:

PLMシステムまたはプロセス管理システムの適切なコンポーネントについて説明します。どう呼ぶかは関係ありませんが、これは可能性であり、ツールであり、プロセス、あるいはプロセス内部のツールであり、プロセスが最も重要な部分であるため、そのようなコラボレーションを実際に実現するには、プロセスをサポートするツールが必要です。例えば、ある分野の専門家でない人が、別の分野の専門家が作成したモデルを使用できるように共同作業をします。

Steven Dom氏:

分野や特定の属性ではなく、開発全体を通じて統合されたシステムを実際に検討することができます。私は騒音・振動エンジニアでもありますが、簡単な例を挙げてみます。以前は、特定の騒音を低減するために、質量やダンピングを追加するツールがありました。しかし、今では、ギアボックスとモーターが連動して駆動ラインにジャダーが発生する可能性があるため、制御エンジニアと共同で作業することも考えられますが、モーターの制御電子回路を変更すれば、機械的な変更を加えることなく、ジャダー効果を実際に低減できるかもしれません。つまり、コラボレーションが必要になります。また、その意味では、すべてのエンジニアがオープンマインドを持つということでもあります。

Alexander Heintzel氏:

その考えをさらに進めると、完全な電気自動車になると思います。電気モーターではシフトレバーは不要なため、ギアボックスは必要ありません。すべての車には、ステアバイワイヤ、ドライブバイワイヤ、ブレーキバイワイヤがあります。いずれも自動運転のレベル3またはレベル4にあります。

Alexander Heintzel氏:

この場合、BMW、フェラーリ、ゴルフはアイデンティティを維持します。ゴルフは正しい例ではないかもしれません。なぜなら誰がゴルフを買うのですか?しかし、とにかく、ブランドの差別化の未来について話しましょう。今後、どのような新しいIPがブランドを差別化すると思いますか?私の説明を参考にしてください。

Steven Dom氏:

おっしゃる通りだと思います。非常に良い質問です。白黒のはっきりする問題ではないと思います。特に自動運転車については、ブランドをどのように差別化するかだと思います。電気自動車については、まだ運転の要素があると思います。お話のように、BMW [ドイツ語00:21:14] はまだそこにあります。BMWを宣伝するつもりはありませんが、レビューにもあるように、BMW i4のドライバーは、BMWのように運転できると言っています。これは良いことです。ユーザー・エクスペリエンスについても、依然としてブランドの差別化の主要な側面になると思います。これはOEMにとっての課題です。メルセデスに乗ったらメルセデスだと感じさせる必要があるということです。ゴルフの場合、ターンするときに、内側の右輪が持ち上がらなければゴルフとは言えません。何世代にもわたってゴルフのトレードマークであり、ゴルフに乗っていると実感できます。

Alexander Heintzel氏:

そうですね。

Steven Dom氏:

運転すると、内側の後輪が地面から離れます。それがゴルフである理由の1つでした。エンジニアは、何世代にもわたってそのように設計しています。その確証は得られませんでしたが、事実でした。

Steven Dom氏:

つまり、ユーザー・エクスペリエンスは非常に重要です。また、さまざまなOEMが、車内に作られた環境でユーザー・エクスペリエンスをどのように提供するか?また、独自のものにするにはどうすればいいのかなど、自社をどのように差別化するかを真剣に考えています。自動運転車では、その課題ははるかに大きくなります。なぜなら、誰もがただの同乗者になるからです。

Tom Van Houcke氏:

はい、自動運転車ではその通りです。誰もがただの同乗者になります。どのような感じになるでしょうか?自分で運転しているときと同じような感覚になるでしょうか?

Steven Dom氏:

ロールスロイスの自動運転車の場合、空飛ぶカーペットのようでしょうか?BMWは、スポーツカーのように自律的に運転すべきでしょうか?

Alexander Heintzel氏:

そうですね (肯定的)。

Steven Dom氏:

どう思いますか?

Alexander Heintzel氏:

ユーザーはそれを受け入れるでしょうか?自動運転、実際の自動運転車について、特にTomさんの話の中で、単なる同乗者となるレベル5の話をしましたが、レベル4もすでに実現されている、または実現できると思います。HMI (ヒューマン・マシン・インターフェース) は、ブランドを差別化する上で、現在よりもはるかに重要な役割を果たし、適切な車両に最適な感覚を与えると思いますか?

Steven Dom氏:

全くその通りだと思います。先ほども言ったように、車両との関わり方は、実際にはブランドによって異なると思います。車両とどのように関わるのか、車両のアイデンティティ、キャラクターがどのように定義されるかです。HMIはその一部であり、どのように機能するかも重要です。HMIは重要な側面だと思います。なぜなら、特に自動運転車の場合、同乗者になりますが、その車両の動作や快適さ、つまり快適さのレベルや種類なども重要になります。Tomさんは、この人間のような運転でそれを言及していたのだと思います。

Tom Van Houcke氏:

その通りです。今日、多くの調査がありますが、人間はどのように運転するのでしょうか?しかし、問題は、これが関連性を持ち続けるかどうかであり、おそらくそうならないでしょうが、私たちはまだその準備ができていません。市場もまだその準備ができていません。特にヨーロッパの市場では、実際にオートマチック・トランスミッションを受け入れるのにかなりの時間がかかりました。自動運転車にはまだ道のりがあります。もちろん、安全が最優先事項ですが、快適さを提供することも必要です。自動運転車が受け入れられる必要があります。[クロストーク 00:25:59]。

Alexander Heintzel氏:

私たちは

Steven Dom氏:

実際には80%の人が、明らかに車の他のすべての機能をオフにしているようなものでした。そこで問題となるのは、仮に誰もがオフにすれば、OEMがそれを受け入れるまでには、まだ長い道のりがあるということです。正直なところ、私はそれらをオフにしました。それについては、完全に認めます。私が運転している車のことを言っているのではありません。

Alexander Heintzel氏:

世界市場でレベル3初の車、ラグジュアリー・セグメントのメルセデスSクラスが短期間で発売されています。おっしゃる通り、一般のお客様がそれを体験できるようになるまでには、長い時間がかかります。これは、最も関連性のある質問の一つだと思います。市場をどのように準備しますか?どうすれば市場やユーザーの準備が整うでしょうか?なぜなら、ほとんどのユーザーは、適合したクルーズ・コントロールさえ持っていないからです。では、これらの車を販売できるように、レベル3、4、5の市場をどのように準備すればよいでしょうか?

Steven Dom氏:

最も重要な部分は、市場やお客様を説得することだと思います。市場やお客様の準備が整うを待つだけでなく、それを受け入れるように説得することが重要です。おっしゃる通り、80%の人が自分の車でこれらの機能をオフにしています。まだそれらの機能は受け入れられていません。その準備は

Tom Van Houcke氏:

お客様が何を望んでいるか分からないため、受け入れが進んでいないのでしょう。お客様が何を期待しているのか分かりません。もちろん、お客様も安全な運転やこれらの自動機能も望んでいます。運転がより安全になっても、まだそれを受け入れないのです。

Steven Dom氏:

その通りです。

Tom Van Houcke氏:

なぜなら、正確には望むことではないからです。ですから、まずは、次のステップに進む前に、お客様が何を期待しているのかをよく理解することです。

Steven Dom氏:

その意見は間違いなく正しいと思います。そして、それは市場の準備の一部です。ドライバーが実際にどのようにして、制御のレベルを手放すかを理解することです。現在、これらの機能の一部が、おそらく安全で予想外の方法で動作します。車両がしていることが安全でないという意味ではなく、その意味でドライバーや同乗者が車両に期待していないことを車両が行っているため、車両が自律的に運転し続けることを許可しない、または少なくともそれらの是正措置が講じられていないことになります。

Tom Van Houcke氏:

しかし、当初は、何かを自動化することは素晴らしいことであり、OEMは安全性に重点を置いて行っていたと思います。このような自動機能の運転支援機能があるのは素晴らしいことでしたが、その後、それがユーザーの希望と合致していないために、使用されていないという認識や洞察を得ることとなりました。ですから、これは進歩的な洞察だと思います。

Tom Van Houcke氏:

当初は、車両をどのように自動化するかがすべてでした。機能を自動化するにはどうすればよいか?どうすれば安全性を高めることができるか?などです。「安全性」とは、自動運転車、または電気自動車の一部の機能の自動化についての言葉でした。しかし、認識が変化しています。現在、お客様を考慮することが必要だと理解しています。選んでもらうためには、お客様が何を望んでいるのかを把握しなければなりません。安全性だけでなく、快適さとのバランスも取る必要があります。ユーザー・エクスペリエンスとバランスをとる必要があります。

Steven Dom氏:

全くその通りだと思います。

Alexander Heintzel氏:

「レベル2からレベル4、レベル5に直接移行するだけで、レベル3は必要ない」という専門家の話を聞くことがあります。今のお話を仮定すると、革命よりも進化を信じているということですね。今日のほとんどのお客様が現在の自動レベルを受け入れるのに抵抗があることから、レベルをスキップすることが賢明であるとは言えません。

Steven Dom氏:

100%確信しているわけではありません。すぐに車両をレベル5にできるのであれば、それは可能だと思います。たぶん、運転の操作をしなくなれば、受け入れはより簡単になるでしょう。車両はただすべきことをするだけになります。車両が安全に走行し、人は何の責任も持つ必要がない、または少なくとも、もう責任はないと感じるような車両をメーカーや政府が証明すれば、人々の心に大きな変化が生まれると思います。

Steven Dom氏:

一方で、もちろん、それを進化させることは、明らかに前進です。自動運転機能が利用可能になれば、それが明らかに正しい方法であるため、すべての自動車メーカーはこれらを実装するでしょう。マーケティングの観点から考えると、まだ準備ができていないからといって、お客様が車の特定の機能を否定することはありません。

Steven Dom氏:

それは、メルセデスの「レベル3の商用車を最初に実現する」という要素でもあります。メルセデスが販売しているレベル3の自動運転車は、ある種の名声を得ています。それは論理的で、正しいことです。それはメルセデスの視点から完全に理解できます。

Steven Dom氏:

おそらく5年から10年後には、レベル3、4、最終的にレベル5になると思います。レベル5の商用の自動運転車がいつ登場するかを正確に予測することはできません。技術的にはより早い時期に実現できるかもしれませんが、法的な課題もあります。いつ実現するか待ちましょう。人々が受け入れるか、自動車メーカーがこれらの機能が提供可能になったときにリリースするでしょう。商業的観点からだけでも、その必要はあります。自動車メーカーがリリースをためらうとは想像できません。

Tom Van Houcke氏:

しかし、それが進化なのか革命なのかは分かりませんが、完全な自動運転車の方向に進んだとしても、まだ車両を所有する必要があるのでしょうか?それとも、シェアモビリティの方向に進むのでしょうか?このようなシステムを設置するための措置が取られている都市があるかもしれません。一部の人々がその方向に進むことを認められないのであれば、モビリティの概念を完全に再考する必要があります。

Tom Van Houcke氏:

私たちOEMにとっては避けてとおりたい話題だとしても、確かに考えなければならないことであり、可能性が開かれます。また、その可能性は、車が引き継ぐことを受け入れる方法かもしれません。誰もが車を所有する必要はありませんが、完全にインフラとモビリティが再編成されることになります。

Steven Dom氏:

重要な点ですね。実際、ほとんどのOEMは、私たちがどのように関連性を保つか、または自動車メーカーがシェアモビリティ・タイプの環境でどのように関連性を保つかという点で、実際にその方向を検討していると思います。それにはまだ答えが必要な多くの質問があると思います。次の問題は、特定のブランドがそのように推進するか、またはシェアモビリティでどのようにブランド・アイデンティティを得るかということです。ブランド・アイデンティティは別のレベルの問題となり、必要に応じて、別のレベルの不確実性が生じます。自分は本当に望んでいるのか?つまり、自分は何を求めているのか、シェアモビリティで追加料金を支払うのか、ミドルクラスのブランドではなくメルセデスで迎えに来てもらうか?良い質問ですが、正直なところ、私はそれに答えられません。

Alexander Heintzel氏:

私たちは皆、答えがないと思います。結論として、将来のある時点で、性能やハンドリングなどの基準は重要視されず、快適性や信頼性などの基準が残り、接続性やユーザー・インターフェースなどの新しい基準がこのモデルなどの購入者の基準を定義することになると思いますか?答えは簡単です。

Steven Dom氏:

その通りです。

Tom Van Houcke氏:

答えは簡単です。イエスです。

Steven Dom氏:

答えは間違いなくイエスです。つまり、車が単独で走行する場合、性能やハンドリングを誰が気にするでしょうか?車はそれに対処する必要がありますが、人は車の快適さを気にするでしょう。それは明らかです。車に快適さを求めることは、信頼性についても求めていると言えます。Tomさんがシェアモビリティについて話していたように、将来的に信頼性や耐久性はある日突然、「17万キロや20万キロも良い走りをするように設計したのに、車の調子が悪くなる可能性がある」などと話していたように、必要とされていたものではなくなるでしょう。シェアカーが実際に1日に50キロではなく、1,000キロ走行する場合、変更したい、または、これらの車両の使用が実際に3か月後に停止することを受け入れられるとは思いません。極端な考えですが、このような意味で考える必要があります。

Alexander Heintzel氏:

Stevenさん、Tomさん、素敵なお話をありがとうございました。このポッドキャストを聞いている皆さんも楽しんでいただけたでしょうか?どうもありがとうございました。気をつけて運転してください。よい一日を。では、これで終了します。

Alexander Heintzel (ATZ International編集長) - ホスト

Alexander Heintzel (ATZ International編集長) - ホスト

Alexander Heintze博士は、エンジン、自動車技術、エレクトロニクス分野のエンジニア向けに、英語とドイツ語で世界中で発行されている主要雑誌ATZ、MTZ、ATZelectronics、ATZheavy-dutyの編集長です。彼はATZポッドキャストシリーズ「Talk on Technology」のホストであり、自動車エンジニアリング・コミュニティを対象としたATZliveカンファレンスと強いつながりがあります。

Steven Dom氏 (Simcenter自動車業界ソリューション担当ディレクター) - ゲスト

Steven Dom氏 (Simcenter自動車業界ソリューション担当ディレクター) - ゲスト

20年以上のエンジニアリング経験を持つSteven氏は、エンジニアリング、エンジニアリング管理、製品管理、営業など、さまざまな役職を務めてきました。現在は、自動車業界ソリューション担当ディレクターを務めています。現在の役職では、ソフトウェア、ハードウェア、サービス部門、顧客技術およびビジネス・プロセスのコンサルタント業務にわたる、OEMメーカーやサプライヤーの戦略的ロードマップの策定をサポートしています。さらに、ハイブリッド自動車や電気自動車の開発アドバイザーでもあります。

Tom Van Houcke氏、Simcenterエンジニアリング・サービス担当ディレクター - ゲスト

Tom Van Houcke氏、Simcenterエンジニアリング・サービス担当ディレクター - ゲスト

2003年以来、Tom氏は、さまざまなエンジニアリングの課題に取り組む世界中の自動車メーカーやサプライヤーを支援しています。彼は、NVHと音響、運転のしやすさ、車両力学などさまざまな属性のソリューションと技術に関する、20年にわたるエンジニアリングの専門知識を有しています。現在の役職では、シミュレーションと試験を組み合わせて性能エンジニアリングのセンター・オブ・エクセレンス (CoE) を管理しています。技術革新プロジェクトに注力し、自動車業界の電動化および自動運転車の開発推進を支援しています。

興味深い動画:

興味深い記事: