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⏩ 自動車業界のイノベーションを推進する

執筆者 Will Haines

マルチドメイン統合BOMがもたらす自動車に関する知見

イノベーションの追求は、今日のダイナミックな自動車業界の原動力です。OEMとサプライヤーは、急速に変化する消費者の期待に応える、最先端の自動車と自動車システムを提供するという課題に直面しています。業界がハードウェア主導型からソフトウェア中心の自動車に移行するにつれて、開発サイクルの複雑さが増し、自動車メーカーは品質、コスト効率、パフォーマンスを確保しながら製品開発を加速することが不可欠になっています。

自動車業界では、より手頃な価格の電気自動車、高度なレベルの自動運転、およびコネクティビティの強化へのシフトが進んでおり、次世代自動車のソフトウェア・コンテンツの爆発的な増加と複雑化につながっています。

統合型コラボレーションの必要性

自動車のイノベーションを推進するためには、意思決定の迅速化、エラーの削減、効率の向上のすべてが必須です。製品開発関係者は、プロセスのすべてのレベルにおいて正確で最新の同じ情報にアクセスできなければなりません。これには、マルチドメインの情報ハイウェイが必要です。

エンドツーエンドの統合型製品コラボレーション・アプローチにより、エンジニアはハードウェア、ソフトウェア、電気、電子などの領域間でシームレスに作業でき、コミュニケーションと調整を継続できます。これを実現する鍵となるのは、マルチドメイン部品表 (BOM) です。

マルチドメイン部品表とは何でしょうか。また、それが必要なのはなぜでしょうか。

マルチドメインBOMは、すべての情報を格納した統合情報リソースであり、製品エンジニアリング、製造、およびサービスを支援するデータ要素間の関係を維持します。マルチドメインBOMは、ハードウェア、ソフトウェア、電気、電子といった領域にわたるコンポーネントや、部品、材料、およびそれらの数量を包括的なリストにしたものです。また、これらの領域間でのコラボレーション、リアルタイム更新、製品バリエーション構成、および変更の同期を容易にし、製品ライフサイクル全体で統一されたBOM戦略を促進します。

分断された領域間でBOMを同期する困難さ

領域によってリリース・スケジュールが異なるという課題は、正確なBOMを維持するうえで大きなハードルとなっています。例えば、ソフトウェア・チームは開発サイクルが短いことが多い一方、機械エンジニアリング・チームのリリース・スケジュールは異なっています。この不一致によって、ソフトウェアと最新のハードウェアとの互換性がないなどの問題が生まれ、高度な機能の有効性が損なわれかねません。

自動車企業向けの統合型マルチドメインBOMの価値

マルチドメインBOM管理には、いくつもの利点があります。まず、詳細なデジタルツインを実現し、製品ライフサイクル全体にわたるコンテキストとトレーサビリティを提供します。有効性の管理、部品と、アセンブリ、サブアセンブリの作成、定義、および再利用、代替とソリューション・バリアントの定義、ベースラインと特性の定義、サービスBOMとメンテナンス時構造の設定、BOMデータの他の外部システムとの同期を行うことができます。

また、ライフサイクル全体を通じて、製品のバリエーションに関する共通のマルチドメイン定義を管理できるため、製品のバリエーションが増えてもコストがかさむことがありません。これにより、企業は製品バリエーションを効率的に開発、保守、拡大し、製品構成を最適化することで設計のモジュール性を促進し、市場で最大限の成功を獲得できます。

最後に、BOMの設計との自動一致により、構築可能な製品の組み合わせをリアルタイムで正確に3Dビジュアル化でき、早期の検証とデジタル・モックアップ (DMU) が容易になります。製品開発サイクルのどの段階でもDMUを構築してビジュアル化することで、意思決定者は検証、クリアランス解析の実行、カーボン・フットプリント・データと製品原価の表示、および アセンブリ・レベルの予防保全検査 (PMI) の実施を行うことができます。 この適応性があり、パーソナル化された、クラウド対応のBOMソリューションは、お客様のニーズに合わせてイノベーションを加速します。また、クラウドで利用できるため、より迅速でスケーラブルな開発が可能です。

エンジニアリングBOMへのソフトウェアの統合

BOM

マルチドメインBOMの重要な側面の1つは、ソフトウェアをエンジニアリングBOM (EBOM) にシームレスに組み込む機能です。これにより、製品開発の全体像を把握し、統一されたフレームワーク内でソフトウェアとハードウェアのコンポーネントを連携させることができます。ソフトウェアを互換性のあるハードウェア依存関係と統合することは、特にソフトウェア定義型車両の場合、適切な実行と車両性能を確保するために重要です。

先進運転支援システム (ADAS) の開発について考えてみましょう。ADASの分野では、物理的なセンサーとソフトウェアの間の相互作用が安全性と機能性にとって重要です。ソフトウェアとハードウェアのコンポーネント間でリリース・スケジュールがずれていると、互換性がなくなるリスクがあります。ソフトウェア部品をEBOMにシームレスに統合することで、この課題に効果的に対処できます。

統合されたCI/CDを連携させ、シームレスなコラボレーションを実現

EBOMへのソフトウェア部品の統合は、理論的な進歩であるだけでなく、現実世界の課題に対する実用的な解決策です。この相乗効果を実現するための重要な要素は、継続的インテグレーションと継続的デリバリー (CI/CD) システムの実装です。この自動化プロセスにより、ソフトウェア成果物がBOMに取り込まれ、手作業によるミスをなくし、ソフトウェアとハードウェア・コンポーネントの統合が合理化されます。

統合されたCI/CDをPolarionやJiraなどのアプリケーション・ライフサイクル管理 (ALM) システムに接続することは、ソフトウェア開発と広範な製品ライフサイクルとの整合性を取るうえで、きわめて重要なステップになります。この連携により、ソフトウェアの最新の進捗が、製品開発プロセス全体とスムーズに調整されます。

重要なビルド情報へのアクセス

この統合アプローチのなかで、簡単でありながら強力な機能はビルド情報へのアクセスです。ユーザーはハイパーリンクから詳細なビルドレポートとジョブレポートを参照でき、EBOM内のソフトウェア・ビルド全体で透明性とトレーサビリティが確保されます。

自動車のイノベーションの未来を手にする

自動車業界がインテリジェントなコネクテッド・カーを中心とした未来に向かって進むなか、それを実現する重要な要素として浮上しているのが、高度なBOM統合です。EBOM内でソフトウェアとハードウェアのコンポーネントの相乗効果を発揮することで、自動車メーカーは最新設計の複雑さを克服するとともに、競争の激しい自動車市場で他社を凌駕する新製品を生み出すことができます。

シーメンスの 製品開発の加速 は、オープンかつスケーラブルな統合型ソフトウェア・ソリューションです。OEMやサプライヤー、新興のメーカーは、相互連携し、サードパーティ・アプリケーションともシームレスに連携するCAD、CAE、シミュレーション、PLM技術を通じて、開発プロセスに変革をもたらすことができます。以下の機能によって、自動車メーカーをサポートします。

  • 目標を達成し、コンプライアンスを徹底
  • 最適な設計案を早期に自動生成
  • 製品およびシステムを仮想検証
  • 最新の複雑な自動車を実現

非常に多くの自動車メーカーが次世代の車両を開発しようと競うなか、成功する企業と取り残される企業を分ける重要な鍵はイノベーションと言えるでしょう。

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