開発したEVバッテリーは故障してしまうのか?

車両を電動化するなかで、自動車業界はいくつか重要なステップを踏んで自動車用バッテリーの安全性と耐久性の確保に努めています。バッテリーの性能や熱管理のほか、過充電、短絡、衝撃といった事態への反応を評価するために、厳格なテスト・プロトコルを導入しています。また、バッテリーの経年劣化はもちろん、より深刻なバッテリーの熱暴走についても徹底したテストを行う必要があります。
こうした要件に適切に対処する鍵は、設計を前倒しすることです。つまり、デジタルツインを使用して設計プロセスの早い段階でバッテリーに生じる影響を予測することで、物理的なテストとトラブルシューティングのコストを最小限に抑えることができます。
では構造耐久性についてはどうでしょうか?
通常、車両が路面のくぼみや砂利道、スピードバンプ (減速帯) を通過するときに、車体の下にボルトで固定されているバッテリーは、車体が受けるのと同じ荷重を受けます。バッテリーが適切に設計されなければ、繰り返し荷重を受けることでバッテリー構造に損傷が蓄積し、早期故障と高コストの原因になります。
別のブログ記事でバッテリーの振動テストについて説明しています。この記事のなかで、必要なテストシナリオと荷重条件を決定する段階的なアプローチによって過剰テストを回避し、コストを抑える方法を紹介しています。
そして他にも何か改善法はないでしょうか?デジタルツインを使って、ここでもバッテリーの耐久性テストを前倒しできないでしょうか。早い段階からバッテリー構造の挙動を予測して理解できるようになるはずです。
シーメンスのシミュレーションの専門家Dirk von Werneはデジタルツインを使った耐久性テストの前倒しについて調査し、有効なプロセスを考え出しました。このプロセスは、シーメンスのテスト・ソリューションと数値シミュレーションのノウハウを活用して、必要な荷重条件を特定します。
シーメンスのテスト・ソリューションを使うと、テストを前倒しで実施できるだけでなく、バッテリーを取り付けた車体の影響も把握することができます。バッテリーは車体構造と相互作用し合い、補強もします。バッテリーと車体構造が一体化しているため、バッテリーが受ける荷重は車両システム全体の剛性と固有モードに大きく依存することになります。そのため、走行中の荷重シナリオと応答は非常に複雑であり、コンポーネントの個別テストではなかなか再現できません。こうした影響をシミュレーションに含めることで、車体との相互作用を考慮してより優れたバッテリーを設計し、コンポーネントのより良い加速試験シナリオを迅速に開発することができます。
さらに、このシーメンスのテスト・ソリューションを使ったアプローチは、耐久性を損なわずに、バッテリー・パックの最大限の軽量化も果たします。実際、バッテリーは電気自動車の中で最も重い (そして最も高価な) コンポーネントの1つです。
それでは、こうしたエンジニアリングの課題への対処法と、このアプローチのさまざまな利点について見ていきましょう。
デューティ・サイクルと荷重条件
まずは、設計する車両のミッション・プロファイルを定義することが重要です。標準定義も用意されていますが、一般的な使用条件しか反映しておらず、開発中の特定の車両や特定のターゲット市場などには適合しない場合があります。したがって、可能な限り、同じような車両を使って、必要なテスト条件でデータを収集することを検討する必要があります。例えば、1つ前の車両モデルを使ってデータ収集するのも1つの方法です。また、高速道路、市街地、砂利道など、どこを何キロくらい走行するか、どの程度の速度範囲で走行するか、快適さを求める運転か、スポーツカーとしての性能を求める運転かなど、さまざまなシナリオを考慮することができます。結局、開発中の車両に必要な荷重条件を見つけることは、決して簡単なことではありません。
Simcenter Testlab Mission Synthesisは、何年にもわたる走行によって車両が受ける荷重シナリオを加速試験サイクルとして凝縮できるソフトウェアです。このソフトウェアで、さまざまな条件下で受ける「損傷の可能性」を理解し、「テスト・プロファイル」をより正確に合成することができます。このプロファイルを検証テストやシミュレーションで使用し、その荷重条件を構造のデジタルツインの入力として使用します。

応力を理解する
自動車の耐久性に関しては、何十年にもわたる車両エンジニアリングに基づいて、シミュレーション・プロセスがすでに確立されています。旧車両モデルのナックル部にかかる力や実際の路面プロファイルを入力として使用することで、車両の挙動をSimcenter 3D Motionなど、マルチボディ・シミュレーションでシミュレーションし、バッテリー取り付け部にかかる応力や境界面力を導出することができます。
Simcenter 3Dで有限要素シミュレーションを実施し、バッテリー取り付け部の荷重のほか、時間ドメインまたは周波数ドメインの応答解析で得られるモーダル応力、複数の荷重ケースの組み合わせに基づいて、バッテリー構造の損傷や寿命を予測します。その後、損傷ホットスポットをポストプロセスすることで、その局所データをさらに詳しく解析することができます。
ただし、バッテリーは、特殊な材料、多くの接続部、非線形性など、非常に構造が複雑です。また、バッテリーと車体構造との構造的結合は強力です。このような理由から、「従来型の」アプローチを用いるのは容易ではありません。そこで頼りになるのが、テストとシミュレーションの両分野で豊富な経験を誇るSimcenter Engineeringによるサポートです。
Dirkはこう説明します。「振動荷重がかかったとき、構造が実際にどのように振る舞うのかを理解する必要があります。バッテリーは非線形挙動を見せることが予想されるため、有限要素モデルでそれを表現するための最適なモデリング手法を見つける必要があります。シーメンスは、テストとシミュレーションを組み合わせた豊富な経験を活かして、お客様が適切な前提条件を定義できるようサポートします。モデリングのガイドラインは、物理的なバッテリーとシミュレーション・モデルの相関関係に基づいて定義し、両者が十分に一致するまでモデルを調整します。最終的に、実際のバッテリーを正確に表現するデジタルツインが得られます。」
バッテリーの構造耐久性評価の全体的なプロセスを以下に示しています。

最適解
前述したように、航続距離を最大限に延ばすために、車両の軽量化が強く求められています。ここで役立つのが数値最適化です。
最適化を可能にするには、耐久性予測を自動最適化プロセスに組み込んで高速実行できるようにしなければなりません。 そのためには、モデルのサイズと精度のバランスをとる必要があります。1つの方法は、ボディをスーパーエレメントとして低次元化して表現することです。
以下に示す最適化プロセスは、Simcenterポートフォリオに含まれるHEEDSを使用したものです。最適化の一般的な目的は、優れた耐久性能を確保しながら、可能な限り軽量のバッテリー・フレームを実現することです。最適化パラメーターには通常、バッテリー・フレームの断面積と材料の厚さ、および車体への取り付けボルトの位置が含まれます。
この最適化は、NXでCADジオメトリをパラメーター化し、メッシュの自動生成、解析、ポストプロセスを行うことで可能になります。HEEDSの最適化は、さらにAIを使用して強化しています。

まとめ
このブログ記事では、EVバッテリーのCAEベースの耐久性解析プロセスを紹介しました。
耐久性シミュレーションを実施することで、機械設計を前倒しし、構造を最適化し、コンポーネントの有効な加速試験シナリオを開発することができます。
このアプローチで得られるメリットは?
- CAEベースのプロセスにより、設計改善案を早期に特定
- 保守的なアプローチから脱却して軽量化を実現
- バッテリー・テストを改善して加速
そして、あなたが開発するバッテリーは故障しません!