より安価に、より速く、より効果的に: エレクトロニクス・エンジニアリングにシミュレーション駆動型設計が不可欠である理由
現代社会におけるシミュレーション駆動型設計の重要性については、よく耳にします。しかし、なぜそれほど重要なのでしょうか。
それは、製品をより安価に、より速く、より効果的に作ることができるからです。
ほかにも理由はありますが、これらのメリットは最も直接的で明らかな影響を与えるため、最初にこちらに焦点を当てましょう。
より安価に – 予期せぬコストを回避
開発ライフサイクルの後半であればあるほど、設計変更のコストは高くなります。タブレット、携帯電話、スマートウォッチなどの高度に統合された製品に関しては、特にそういえます。
機械CADツールと電気CADツールを使用して、個別の要素をすべて構築したら、要素間の関係を定義します。どれか一つを変えると、すべてに効果が波及します。製品全体の再設計が必要な場合もあります。
終盤での設計変更は、製造ツールの変更、ソフトウェアの修正、再認証の申請など、サプライチェーンにも影響します。つまり、発生するコストは再設計自体だけにとどまらず、多くの場合、広範囲にわたります。
シミュレーションを使えば、設計変更をはるかに簡単かつ低コストで行える開発プロセスの早期に、コンセプトをテストして実証することができます。シミュレーションを設計プロセスの早期に前倒しすることで、予期せぬコストを回避し、製品開発全体を予算内に収めることができます。
より速く – 市場投入期間を短縮
開発プロセス終盤での設計変更は、コストがかかるだけでなく、貴重な時間が奪われます。実際、追加コストにはエンジニアリング時間の追加も含まれます。終盤になって大規模な再設計が必要になった場合、プロジェクト全体が後退してしまいます。これは最終的には、製品の市場投入が遅れ、より早く製品を生産した競合他社に負ける可能性があることを意味します。
シミュレーション駆動型設計を採用することで、プロジェクトの初期段階で性能を最適化できます。これにより、競合他社に先駆けて製品を市場に投入する最良の機会が得られ、利益の最大化に役立ちます。また、開発時間をスケジュールどおりに進めることで、エンジニアは次の製品の設計にすばやく移行できます。
より効果的に – イノベーションを生み出し続ける
終盤で設計変更が必要になった場合、最も優秀なエンジニアを担当者にして、問題の解決に当たらせるのが当然の対応です。これにより、問題をできるだけ早く修正し、プロジェクトを前進させることができます。
遅延は利益を損なう可能性があるため、短期的に見れば、これは完全に理にかなっています。しかし、長期的には悪循環を生み出し、そこから抜け出すのが難しくなります。前のプロジェクトを修正している優秀なエンジニアは、次のプロジェクトに取り掛かれません。そのため、次のプロジェクトが遅れるか、重要な経験を持つメンバー抜きで開始されます。そして、優秀なエンジニアの手が空いたとしても、次のプロジェクトはすでに途中まで進んでおり、またしても性能の問題を修正する必要が出てくるかもしれません。優秀なエンジニアのスキルは、問題を解決するために常に戦術的に使用され、戦略的にイノベーションをもたらすためには使用できません。
イノベーションがなければ、企業は市場シェアを失います。電子機器の消費者は最新かつ最高のテクノロジーを求めており、それを提供できる企業が最も成功するのです。
シミュレーションを開発プロセスの最前線に据えることで、火消しに多大な労力がかかる、終盤での大規模な設計変更の必要性をなくせます。最もスキルが高く、経験豊富なエンジニアは、イノベーションに集中して、電子、熱、機械、音響、電磁などの複合領域にわたる製品性能の観点から設計空間全体を探索できます。また、それぞれの領域間のトレードオフと、消費電力、フォーム・ファクター、重量など、製品の競争力を高める主要な要因への影響を調査できます。長期的には、競争の多い市場のなかでも卓越したユーザー・エクスペリエンスを備えた、優れた製品が生まれます。
幸せなチームは一緒に働き続ける
ここまでのところ、納得していただけたでしょうか。
では、シミュレーション駆動型設計は従業員の満足度を高め、会社にとどまる可能性も高いと言ったらどう思われますか？
世界的に熟練したエンジニアが不足している現状を考えると、スタッフの満足度と定着は、すべてのビジネス・リーダーの最優先事項です。
プロジェクト終盤に優秀なエンジニアを問題の火消しに起用することは、イノベーションだけに悪影響を与えるわけではありません。彼らの士気についても考えるべきです。彼らは、最新の技術的進歩を最大限に活用した製品を作りたいという思いから、何年も勉強し、この業界で働いてきました。しかし、プロジェクトを救うために常に終盤に投入されるような状況では、イノベーションの可能性を十分に検討する機会は決して得られません。会社がそれを提供することができれば、彼らは自らの可能性を社内で発揮でき、会社にとどまるのではないでしょうか。
シミュレーションをフロントローディング (前倒し) する方法
開発サイクルの早い段階にシミュレーションを実施せよと言われても、一体どうすればよいのでしょうか。
設計エンジニアと同様に、シミュレーションの専門家も非常に需要が高く、早期に実施するには多くの専門家が必要になりそうに思えます。
ところが、シミュレーション作業の多くが専門家の手を借りずに完結する場合は、話は別です。
現在は、設計エンジニア自身がシミュレーションを実行できるツールセットがSimcenterに含まれています。これらのツールセットは、すでにお使いの電気CADおよび機械CADパッケージに解析機能を統合したもので、専門家でなくても使用できるように作られており、設計エンジニアがシミュレーションの専門家になる必要はありません。そのため、設計エンジニアは自分の専門分野に集中しながらも、シミュレーション部門にボトルネックを生じさせることなく、シミュレーションを使用して設計性能を調査できます。
しかし、シミュレーションの専門家からすると、自分たちの仕事が奪われることに不満を感じるのではないでしょうか？
実際のところは、問題の火消しにすべての時間を費やす必要がなくなった設計エンジニアとまったく同じで、これはシミュレーションの専門家を幸せにするはずです。目をつぶっていても大丈夫なような、決まりきったシミュレーションを実行する必要がなく、より困難でやりがいのある作業に集中できるため、シミュレーションの忠実度と現実感が新たなレベルに到達します。彼らがベストプラクティスを確立し、設計エンジニアのシミュレーションを見守り、シミュレーションの忠実度を高めることによって、製品性能をさらに最適化できます。
しかも、シミュレーション・プロセスの大部分を自動化することで、一定レベルの品質を確保できます。シミュレーションの専門家は、メッシュ設定や境界条件などを事前に定義したり、証明可能で正確な結果を得られる、専門家以外の人向けのワークフローを作成したりできます。
準備はいいですか？
以上で、シミュレーション駆動型設計が、設計エンジニアとシミュレーション専門家のイノベーションを最大化する方法をご理解いただけたと思います。それが最高の製品を開発するために、どのように役立つかを紹介してきました。コスト削減と、開発期間の短縮、スタッフの満足度に加えて、導入方法を知りたいとお考えのことでしょう。
設計初期段階のシミュレーションによって製品の信頼性がどのように向上するかについては、このウェビナーをご覧ください。またはこちらをクリックして、シミュレーションとテストがどのように音響性能に関する重要な知見を早期に提供し、短時間かつ低コストでイノベーションを実現するかをご覧ください。
