再生可能エネルギー: Simcenterシステム・シミュレーションで、バッテリーのエネルギー貯蔵システムを強化

世界がより持続可能なエネルギー環境へと移行するなか、バッテリー・エネルギー貯蔵システム (BESS) は、再生可能エネルギー源の統合を可能にし、グリッドのレジリエンス (弾力性) を向上させるための重要な要素として浮上しています。
ここで力を発揮するのがシステム・シミュレーションです。高度なシミュレーション・ツールと技術を活用することで、エンジニアはBESSの課題に正面から取り組み、性能を最適化して信頼性を高め、エネルギー貯蔵分野のイノベーションを推進することができます。
システム・シミュレーションを通じて、エンジニアは幅広いシナリオを検討し、さまざまな設計構成をテストして、ソリューションを現実世界に実装する前に検証できるため、最終的には、費用対効果と信頼性の高い、より効率的なBESSの展開へとつなぐことができます。
システム・シミュレーションがどのようにデジタル・トランスフォーメーションを推進し、BESSのあらゆる課題を解決するのか見てみましょう。
エネルギー産業の鍵となるバッテリー・エネルギー貯蔵システム
バッテリー・エネルギー貯蔵システム (BESS) は、「太陽光や風力などの再生可能エネルギー源から生成したエネルギーの余剰分を貯蔵して、需要のピーク時に放出するプロセス」で、極めて重要な役割を果たします。ところがBESSの設計、最適化、運用には多くのエンジニアリング課題があります。このため、さまざまなシステム・コンポーネント間の複雑な相互作用を包括的に理解する必要があります。
Simcenterシステム・シミュレーション・ポートフォリオの一部であるSimcenter Amesimは通常、関係するさまざまなサブシステム { 再生可能エネルギー + バッテリー + 熱 + HVAC + 制御 + パワー・エレクトロニクス + グリッド} を組み合わせるシステム統合で使用します。
Simcenter Amesimを使えば、次のような課題をすべて解決できます。
BESSシステムの設計、サイジング (コンテナ数、バッテリー数)、検証
事前定義済みライブラリから使用可能なすべてのコンポーネント
負荷と消費のバランスをとるための制御、「EMS」(エネルギー管理システム)
太陽光発電や風力タービンなどの再生可能エネルギー
バッテリーのSoC (充電状態)、温度、SoH (健全度)、経年劣化
コンテナの暖房、換気、空調 (HVAC)/空調システムの性能最適化
グリッド/マイクログリッド、電力変換装置、インバーターへの接続
住宅、電気自動車などのエネルギー消費
取引戦略とバランス・メカニズム (BM)/エネルギー・ミックスとエネルギー価格
将来を予想/予測 (気象、エネルギー価格、バランス調整)
規制、認証に準拠
安全性評価: バッテリーの熱暴走、電流ピーク、ヒューズ、電気アーク、火災、爆発
持続可能性、使用済みバッテリーのリサイクル (廃棄EVバッテリーの再利用)
ユーザーは、事前定義済みコンポーネント (コーディング不要) をドラッグ&ドロップして組み立て、完全なシステムを構築できます。 実行は非常に高速で、完全な日/週/年を計算するのに数秒/分 (CPU時間) しかかかりません。経済的な側面や安全性が考慮されています。
知っておきたいこと
バッテリー・エネルギー貯蔵システム (BESS) は、ピーク時とオフピーク時の負荷のバランスを調整することができます。電力需要は、曜日、時間帯、季節によって変動します。
そのため電力価格は、電力需要のピーク時に最も高くなります。一方、需要が少ないオフピーク時には、エネルギー価格は標準レートになります。
ピーク・シェービングを使用すれば、バッテリー・エネルギー貯蔵システムでオフピーク時に電力を蓄え、ピーク時に放電することで電気コストを低減することができます。
BESSは、実際にどのように実装されているのか見てみましょう。ユーザーが、セルからパック、コンテナまでの設計を管理しながら、エネルギー消費者と共に再生可能エネルギー源およびグリッドの側面も管理する必要があることを理解しています。
実際にはコンテナは、モジュール式のポータブル・ソリューションです。バッテリーを輸送用コンテナに収納し、柔軟で拡張性の高いエネルギー貯蔵を可能にします。このユニットはさまざまな場所に容易に展開できるため、一時的な電力ニーズやリモートの電力ニーズに最適です。
このコンテナにはリチウムイオン・バッテリーが多数詰め込まれています。リチウムイオン・バッテリーは、小型・軽量で、容量とエネルギー密度が高く、メンテナンスも最小限で済み、長寿命です。また、急速充電が可能で、自己放電率も高くありません。欠点は、コスト、可燃性、極端な温度への不耐性、過充電、過放電などです。
エネルギー管理システム (EMS) は、BESSおよび関連システムのエネルギー・フローを制御、監視します。EMSは、システム全体の性能を管理、最適化するために使用するデータを収集して解析することで、BMS (バッテリー管理システム)、インバーター、およびその他のコンポーネントを調整します。

最後に、局所的なグリッド・システムを管理、制御し、再生可能エネルギーを含む多様なエネルギー源からのエネルギー供給を最適化するマイクログリッド・ソフトウェアがあります。リアルタイム解析と自動制御に対応して、安定性と性能を維持します。
システム・シミュレーションは、膨大な設計要件に対応するのに適しています。もう少し詳しく調べて、技術的な側面と主なツール機能を見てみましょう。
Simcenter AmesimがBESSに最適な理由
エネルギー市場のニーズが高まるなか、新しく柔軟な運用パターンで稼働する、効率性と信頼性の高いBESSが求められています。
BESSをデジタルで検証することで、テストにかかる時間とコストを減らして、設計サイクルの初期段階から製品に自信を持てるようにする必要があります。同時に、競争力を維持するために、BESSの製造と運用のコストを低減しなければなりません。
BESSシステムは、さまざまな機能やサブシステムに分離することができます。嬉しいことにSimcenter Amesimは、まずそれぞれの問題に個別に対処し、次にそれらをすべて組み合わせて、調査するさまざまなシナリオで完全な動的挙動を取得するための機能をすべて備えています。
実際には、解決すべき課題が山積しています。 その範囲は、通常のサイジング、HVACや液冷/空冷システムなどの熱管理から、より高度な解析 (長年にわたるバッテリーの経年劣化やSoH (健全度)、グリッド/マイクログリッドへの接続、低次元化モデル (RM)、ニューラル・ネットワークによるパワー・エレクトロニクス、人工知能 (AI) までです。
最後に、システム・シミュレーションは、製品開発プロセス全体でモデルとデータを再利用して、継続性を確保します。社内のさまざまな部門間の相互運用性と良好なコミュニケーションを維持します。エンジニアリングの問題を解決するのは、工場のデジタル・ツインです。
BESSの解析に必要なすべての機能
実際にはシーメンスは何年も前から、Simcenter Amesimでバッテリーと電気システムを効果的に表現してきました。当初は、自動車産業の電気自動車をターゲットとしていました。一方、エネルギー産業では、「再生可能エネルギーに、同様のタイプのバッテリーを再利用する」という大きなトレンドが進行中です。
シーメンスは、実績のある技術を適応させて、この新しいタイプのBESSアプリケーションに対応します。重要なのは、これらの新しい要件 (乗用車の容量は、[kWh]ではなく[MWh]や[GWh]) に合わせて拡張し、デジタルツインをパッケージ化して、さまざまなBESSコンテンツ (ラック、コンテナ、システム全体など) を表現することです。
ゼロから始めるのではなく、すぐに使えるテンプレートの既存のデータベースから始めます。 または、離散化熱ネットワーク、集中パラメーター・モデルを含む、100%のシステム・シミュレーションを実行します。1D/3Dカップリング (通常は詳細な流体・熱解析用の3D CFD)、ニューラル・ネットワークによる低次元化モデル (ROM)、人工知能 (AI) により、さらに高度な解析を行うことも可能です。ユーザーは、非常に高速で実行される長いシナリオを、数秒 (CPU時間) で解析できます。
ユーザーは、安全上の重要な懸念事項であるバッテリーの熱暴走も調査することができます。システム・シミュレーションで、バッテリー・モジュール内部の伝播を助長または阻止するセルの熱挙動の影響を容易に評価できます。
暖房、換気、空調 (HVAC) や液冷/空冷によるコンテナの冷却とともに、母線の影響の評価も可能です。ユーザーは、「eCFD」 (「組み込みCFD」) を使用してSimcenter Amesimに直接3D CFD計算を組み合わせて (Simcenter STAR-CCM+を直接Simcenter Amesimに統合して)、コンテナの3D環境内で1Dサブシステムと制御を組み合わせて3Dストリームライン、速度プロファイル、温度勾配を取得します (入口と出口の位置、コンテナ屋根の上部の太陽光の放射の影響など...)。高忠実度の3D CFDモデルからすべての詳細を取得しながら、高速 (CPU時間) でシステム・シミュレーションを記述します。
最後に、BESSコンテナのラック、モジュール、コンパートメントの構成は、データセンターの冷却で何年も前から行ってきたことと同様です。仮想コミッショニングのためのSimcenter Amesimと、システム・シミュレーション、PLCを独自のフレームワーク内で組み合わせます。これにより、制御ロジックとシナリオを事前にテストし、関連するハードウェア・デバイス用にカスタマイズされた適切なソフトウェアで、製造現場に実装した時の成功を確実にすることができます。そうすることで、最初の試行から、運用で最適な結果を得ることができます。
完全なシステム統合
グリーン水素生産と同様に、風力タービンやソーラーパネルなど、数か月にわたる生産の現実的なシナリオを使用して、BESSの性能を数秒で予測できます。最後に、グリーン・エネルギーが生産されてBESSに蓄えられます。必要な時に最適なタイミングでグリッドに供給され、住宅 (建物、家屋) やプラント施設/工場で使用されます。二酸化炭素排出量は大幅に低減します。
ここで示すモデルは、気象条件とシステムの局所化に基づいてシステムの性能を予測します。わずか数分の簡単なシミュレーションを1年間 (12か月) にわたって実行した後、複数のアーキテクチャやコンポーネントのサイズを評価して、最も効率的で収益性の高い設計を選択します。素晴らしい成果です!
入力側では、ソーラーパネルなどの断続的な再生可能エネルギー源を正確に予測できます。 誰でも各自の運用条件をシミュレーションして、システムがどのように動作するのかを知ることができます。ソーラーパネルのサイズは、ソーラーアレイの数、セルの数、および単一セルの面積で決定できます。現在地 (都市)
またはGPS位置
、曇っているかいないかの気象条件
、地面反射係数または濁度係数を入力します。次に、その日または数か月にわたって生成された
エネルギーを取得できるため
、すべての季節の結果を把握することができます。
出力側では、パワー・エレクトロニクス (インバーター、AC/DCコンバーターなど) やマイクログリッドまでの、「純粋な」電気的側面に注目することも可能です。電力ミックスを数か月にわたって確認できます。たとえば、12月 (冬) と 6月 (夏) のバランスを比較します。電気負荷と互換性があり、すべてがグリッドに適切に供給されることを、最終的に検証します。
システム・シミュレーションは、BESSを通じて持続可能性に関する素晴らしい成果を得るのに最適であり、完璧であると言っても過言ではありません。
誰もが、これらの機能で素晴らしい結果を得られることに感銘を受けています。BESSの目標を達成する、シーメンスのSystem Simulationで得られるメリットは、「設計のためのシミュレーション」を使用した製品エンジニアリング・プロセス中だけではありません。「運用でのシミュレーション」を通じても、直接、現場のハードウェア・デバイスの近くで、実用的かつ大きなメリットが得られます。
まとめ
まとめると、製品開発でBESSに対応するには、戦略的アプローチ、初期段階での検討、高度なツール (複雑さを制御してBESSを競争優位として活用するための物理ベースのデジタルツインなど) が必要です。
システム・シミュレーションは、デジタライゼーションによってBESSのプロセスの成功を支援します。
Simcenter Amesimの詳細
Simcenter Amesimは、業界をリードするシステム・シミュレーション・プラットフォームです。統合性と拡張性を兼ね備え、メカトロニクス・システムの性能を仮想で評価して最適化することができます。