業界

ローコードで柔軟なバリュー・チェーンを築く 

執筆者 Veronica Drake

理想的な世界とは、新たな需要が起こるたび、または、規制環境が変わったり、生産の問題が起きたりするたびに、それに合わせてバリュー・チェーンを柔軟に調整して対応できる世界です。しかし、多くの企業は依然として、脆弱なシステム、断片化したデータ、手作業による回避策で四苦八苦しています。やる気はあっても、必要なツールが不足しているのです。 

従来のエンタープライズ・ソフトウェアは、急な変更やニーズ変化に対応するようにはできていません。変化に対応できるようにソフトウェアを改良しようにもコストと時間がかかり、IT部門に過度の負担をかけなければなりません。そのため、在庫の異常を追跡したり、品質チェックを実施したり、土壇場の注文変更に対応したりするために新たなツールが必要になったとしても、その場しのぎの回避策でやり過ごすか、またはせいぜいうまく行くように祈るかしかできません。 

この状況を変えるのがローコードです。 

柔軟性に欠けるシステムでは、オペレーションのニーズに対応できない 

サプライチェーンの複雑化が進むなか、汎用の多目的用エンタープライズ・システムでは、目まぐるしく変化するオペレーション・ニーズを満たせません。ERPシステムは標準化を目指して設計されたシステムです。しかし、新しい倉庫プロセスのテスト、顧客個別の要件に合った注文フローのカスタマイズ、エネルギー使用に関する規制への対応など、柔軟な対応が求められる状況には、別のアプローチが必要です。 

必要なのは、このエンタープライズ・システムの基本を崩さずに拡張することです。そこで役に立つのがローコード・プラットフォームです。 

エンタープライズ・システムの基本を崩さず拡張する 

ローコードは、既存のシステム上に目的に合ったアプリケーションを追加できるメリットがあります。そのため、オペレーション・チームは、問題を迅速に解決できます。ITシステムの大規模なアップグレードを待つ必要も、新しいワークフローを古いシステムに無理やり合わせる必要もありません。 

Mendixを使って開発したSmart Warehousingアプリの活用を検討してみてください。ERPシステムを入れ替える必要はなく、ERPシステムと組み合わせて、在庫管理やアイテム・ピッキング、注文処理を合理化することができます。ユーザーは、実際のワークフローを再現したデジタル・インターフェースを使って、材料を探し、検査の状況を確認し、リクエストに対処することができます。 

このような拡張 (入れ替えではなく) を行うことで、システムの完全性やコンプライアンスを損なうことなく、必要な柔軟性を高めることができます。 

問題を一番よく理解している人にツールを渡す 

倉庫のリーダー、ロジスティクス・プランナー、製造現場エンジニアは何が壊れていて、どのように修理すればよいかを正確に把握しています。しかしこれまでは、その問題解決のためのソフトウェア開発プロセスには、この現場のスタッフは関与していませんでした。 

この流れを変えたのがローコードです。ビジュアル・モデリングと再利用可能なテンプレートを使うことで、開発者でなくてもIT部門と連携して、実際の業務ニーズを反映したアプリを簡単に開発できるようになりました。問題を理解している人がソリューション開発に加わることで、開発速度の向上や使いやすさの改善、業務ニーズと技術の合致にもつながります。 

制御性を損なうことなく迅速に適応 

単に迅速にソリューションを開発するだけでは不十分です。製造業界のIT環境には、安全で追跡可能な、適切に管理されたソリューションが必要です。最新のローコード・プラットフォームは、これらの条件を満たしており、バージョン管理、ユーザー・アクセス、統合、コンプライアンスなど、エンタープライズ・グレードの機能を備えています。 

これにより、組織は管理・監視をおろそかにすることなく、敏捷性を確保できます。正式許可のないIT作業やつぎはぎで追加したシステム修正による技術的な問題を増やすことなく、継続的に改善することができます。 

サプライチェーンの運用を見直す 

製造現場のリーダーが全員ソフトウェア・エンジニアになれば良いということではありません。業務ニーズに合わせてシステムを簡単にカスタマイズできるツールを製造現場のリーダーに与えることが重要です。その逆、つまり、システムに人間が合わせるべきではありません。 

マテリアル・ハンドリングの効率化、品質チェックリストのデジタル化、新しいSKUやプロセスをサポートするアプリの迅速な展開など、ローコード・プラットフォームによって、製造オペレーション・チームは明確な目的と正確さをもってソリューションをカスタム開発することができます。この対応力の高さがレジリエンス (回復力) の源になります。 

複雑化が進むにつれて、適応力の高さがますます重要になります。ローコード・プラットフォームによって、製造企業は、持続可能な方法でバリュー・チェーン全体の適応力を身に付け、拡張させることができます。しかも、業務を一番よく理解している人が業務をやりやすいようにソリューションをカスタム開発できるようにします。